2016.06.30

「ありふれたコンテンツ」こそ、出版する価値がある?

8月5日に大阪で開催する第3回『著者発掘コンテスト』に向けて、
私個人としても「本を出して欲しいなあ」という人に声かけをはじめています。

そうしてやり取りをするうち、ふと思ったことが一つ。
それは「すでに世の中で知られている、ありふれたコンテンツ」の出版企画です。

類書が多いと、それだけ競争も起こり、売れないリスクも高まるのではないか―
そう考えてしまうのが普通かも知れませんが、一概にそうとは言えないというのが
私の考えです。

そもそも、1日に何百冊もの本が出版される現況で、「初」テーマを探して書くこと自体が
すんごい大変ですからね。

「一概に言えない」というからには、コツがあるということです。
そこを少しだけ、記事にしておきたいと思います。

◆ベストセラーと同じテーマでも、せいぜい三番煎じまで

少し前に、ある哲学者を扱った本がたくさん売れました。いわゆるベストセラーです。

さて、このベストセラー発売以後を振り返ってみてください。
数カ月くらいの間は、同じ哲学者を扱ったいくつかの本が、
別の出版社から発売されていたと思います。

時事的なものであれば偶然とも考えられますが、
明らかにベストセラーで興味を抱くようになった読者層を意識して、ということは
よくあることです。
そもそも読者ニーズには応えるべきで、私はどちらかといえば肯定する方です。

でも感覚的には、ベストセラーの影響で売れるのはせいぜい三番煎じくらいまでで、
それ以降は月日が経つほど、そして同じテーマの本が発刊される度に
売れるハードルが高くなっていくと考えています。

だから、「過去にあのテーマが売れたから、同じテーマで本を作ろう」とシンプルに決断する
ということは、あまりやりません。
また、同じテーマの本がすでに既刊となっていれば、
出版社としての立場から、著者を変えて出すということもほぼないと思います。

そうなると、あまりにありふれたコンテンツの本は、
出版することも、売ることもリスクとなる。だから、出版できる可能性はグッと下がります。

◆価値は「経験との融合」から生まれる変化に

さっきのままでは、タイトルと矛盾するので、
この先をじっくり読んでいただければと思います。

さて、ありふれたコンテンツという言葉自体がフワッとしているので、
具体例を挙げて説明しましょう。私の息子が苦手な「なわとび」で。

なわとびに関する本は、Amazonの「本」カテゴリで検索すると
160冊ほど出てきました。
ザッと見ると、子ども向けとダイエット系のものがいくつかありました。
マンガで読みやすくしたもの、図解入りのものもありますし、
さらに広い視野で捉えれば、動画なんかも競合になるでしょう。

この状態で、飛び抜けた実績や資格を持っているわけでもない著者が、
なわとびに関する実用書を出すことは、かなり難しいといえます。

しかし、ここで「これまでの既刊本とは違う」点が明確になって、
読者ニーズと合致するようなものであれば、出版の可能性が出てきます。

たとえば、

  • 兄弟が10人いて、全員が三重跳びまでできる
  • まったく飛べない子が、わずか3日間でハヤブサまで跳べるようになった
  • なわとびをずっと練習していたら、算数の成績が驚くほど伸びた

というように、「おっ!」と思わせる何かがあれば、
たとえなわとびの既刊本が何冊あったとしても、「新しいテーマ」と認識されるんですね。

これに補足すると、上記はいずれも経験が伴い、事実があります。
これがただの理論だと、まったく相手にされません。
つまり、ありふれたコンテンツに経験が融合し、新たな価値が生まれるんです。

 

◆「苦労してまで伝えたいかどうか」が決め手に

もう一つ、出版には欠かせない要素があります。
それは、原稿を書き上げられるかどうか、ということです。

本の原稿は、どんな方でもある程度の時間と労力を費やします。
そして、もらえる印税はそれほど多くない場合がほとんど。
そこまで苦労して、それでも伝えたいかどうかが、まさに出版の可否を分けるんです。

体験を通じて、自分しか持ち得ないコンテンツがある。
そして、「苦労してまで伝えたい」という経験や想い、志がある。
そんな方は、ぜひ自信をもって出版という展開を考えていただければと思います。

何か企画がひらめいたなら、ぜひ『著者発掘コンテスト』へご参加くださいませ。

 

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